百鬼夜行

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オープニング

それは ほしひとつない
ある まよなかの できごとだった
いまにも しずもうとする ゆうひのように
そらを ちいろに そめながら
すさまじい おとを とどろかせ
まっかに もえさかる きょだいな ひのたまが
ほこらの もりに おちた

ほこらの もり そこには とおいむかしから けっかいが
はられており ひとはおろか いのちあるもの
すべての しんにゅうを こばんできた
しかし なんのために そこにけっかいが はってあるのか
いまとなっては おぼえている ものは いない ただ
だれもが わすれかけている むかしばなしの なかに
とくのたかい そうが じぶんの いのちと
ひきかえに じゃあくなるものを ふうじこめた
という いっせつがあるが それもさだかでは ない

それから はんとしがすぎ ひとびとは
ひのたまのことは すっかり わすれていた
じっさい そんな よゆうが なかったのである

それは いつから はじまったのだろう
ひとびとは わらいを わすれ
まちから へいわが きえた
よなよな みのけもよだつ こえが ひびき
なんにんもの ちょうにんが どこかへ きえていった
おしろの とのさままでが きえてしまった
そんな うわさまで ながれたほどである
ちょうど そのころ ほこらのもりから ほどとおくない

もりのなかの あばらやで
みるからに つかれはてた おとこが
ひとりの かげと はなしをしていた

かげの せかいに いきるものよ
わたしに ちからを かしてくれ
いったい なにが おこって いるのだ
このまちは どうなってしまうのだ

たのむ ちょうにんを このまちを そして わたしを
すくってくれ おねがいだ
ひとびとの こえがみちていた
きぼうと よろこびが あふれていた
あのころの まちに
ほんらい あるべきはずの あのころの まちに
しかと たのんだぞ



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